経絡−臓器機能測定器について

本山博著 



西洋医学では神経系が主として生命全体及び各臓器組織の機能のコントロールをしていると考えている訳であるが,本書では神経系の外に針灸で言う経絡―これはヨガで言うチャクラ,ナディの系に当たる(第U章を参照せよ)―も神経系と密接な関係を有しつつ,これとは異なる生命エネルギー系であり,神経系と相俟って身体の全体及び各組織に生命エネルギーを送り,これらの機能をコントロールしていることを明らかにしようと試みた。

その為に第U章では経絡の存在を生理学的手法を用いで明らかにした。
併し,著者も過去十数年間は針灸の経穴をヘッド,ディトマ,ドプナ,石川等の言う内臓―体壁反射の説―勿論,各人の説には相違がみられる。ヘッド,ディトマ,ドブナ等は内臓の機能状況が特定の脊髄分節を介して体壁に脊髄神経系の反射,例えば知覚過敏等として現 われることを説き,石川等は脊髄神経系よりも交感神経系の反射つまり汗腺,皮下細小動脈等に反射が現われることに主眼をおいて内臓―体壁反射を説く。


併し以上各人の内臓―体壁反射の説はそれぞれ内臓―体壁反射の一部を発見しとりあげたものであり,それらの現象は凡て広義の内臓―体壁反射に属するものであると思う。

著者はこの広義の内臓―体壁反射の立場に立ち,十数年間は針灸の経穴を神経生理学的観点からのみ捉えてきた。
ところが,インドの大学で(1969〜1970)生理心理学,超心理学を教えている時,胃潰瘍になりその時奇妙な経験をした.胃が悪いのに,上記の神経生理学的立場に立つ内臓―体壁反射説では説明困難な部分即ち豊隆,足の三里,上巨虚等の膝下の胃経の上に湿疹,皮膚の荒れ等が生じてなかなか治らなかったことである。


この経験を通じて著者は経絡の存在を実感した―そこで帰国後,経絡の存在を生理学的手法を用いて証明せんと試み,経絡の存在すること,陰陽の経絡ではそれぞれ気の流れが逆であること,更に三陰三陽というような関係つまり手足の同じ陽経,例えば足の陽明胃経と手の陽明大腸経は同一経絡をなしていること等が証明された。

又,各経絡の生命エネルギーの動向は各経絡の手足の尖端近くにある井穴によく現われること,各経絡は同名の各臓器と密接な関係にあリ,経絡の機能状況を井穴における皮膚電流,電圧等の測定を通じて測定すると対応する各臓器の機能も判定できること等が明らかとなった。


そこで各経絡―臓器機能の状況を判定する基準を作成し,その基準に基づく経絡―臓器機能の判定を行なった。
更にその判定結果と他の医学的検査結果との比較考察を通じて,二つの判定結果の間に密接な関係のあることも明らかとなった.が同時に次の諸点も明らかとなった。
即ち,井穴の皮膚電流,電位等の測定を通しての経絡―臓器機能検査では,直接には各経絡の機能状況を調べているのだということである。而して各経絡間には,陰陽関係,三陰三陽関係等の特に密接に関係し合っている経絡の組があり,それらの間では生命エネルギー(気)の相互作用,シーソー現象,逆の相関関係等が生ずるが故に(V章の終わりを参照せよ),或る経絡に異常値が見いだされたから直ちにその経絡と同名の臓器に異常ありと即断することは禁物である.というのは,例えば陽明経に異常があるとき,足の胃経に異常がでるときもあり,手の大腸経にでるときもある.又,陽明経の陽に対して陰の関係にある足の太陰脾経等に異常のでるときもあるからである。

併しそれらの密接な関係にある経絡間の動きをデータより読むのに慣れるにつれて,身体全体における生命エネルギーの動き,状況がより深く洞察でき,同時に各経絡―臓器の機能の状況も正確に捉えることができるようになる.又,器質的疾患を或る臓器がもっているとき,それと同名の経絡に多くの湯合,間違いなく異常が現われることも明白となった。


最後に,医学が,人間が生きていることを細胞が生きていることに還元し,更に細胞が生きて生活現象―同化,分化,増殖,排泄―を行なっていることは,複雑な物理的化学的過程にすぎぬ,唯それらの複雑な生命現象が神経系統によってコントロールされているのだと教えている西洋医学に留まらず,身体には神経系,循環系等のほかに,生命エネルギーを身体の各部分組織にくまなく配分する経絡系,ナディ系があリ,それらによっても生命は維持されているのだということを理解し,東西の医学を綜合する医学の方向に進まんことを願うのである。

著者には,経絡,ナディ系は精神的エネルギーとも密接な関係をもち,エネルギー系としての経絡等の研究は,近年生物学の分野で勃興しつつある「生命エネルギーの科学」の進歩と相俟って,将来,身心相関の問題にも解決の糸口を与え,更には「人間とは何か」の問題にも大きな光を与えることになるであろうと予測されるのである。

目 次

I 皮膚抵抗(電流)測定の電気生理学的意味
 1)直流抵抗測定とインピーダンス測定の優劣‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3
 2)生体皮膚の電気的性質とCR等価回路との相違…‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
 3)分極現象について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥10
 4)自律神経と皮膚抵抗(分極を含む)との密接な関係‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥17
 5)新陳代謝及びイオン(移動)と自律神経との密接な関係‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20
 6)第一章の要約‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥21

U 経絡は存在するか,経絡とは何か
 1)ヨガのチャクラ,ナディと針灸の経絡,経穴の定義‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥27
  A)チャクラ,ナディ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥27
  B)経絡,経穴‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥27
  C)チャクラの種類と位置‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥28
  D)経絡の種類と連絡‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥・‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥28
  E)チャクラと経絡の関係‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥29
 2)チャクラの存在に関する生理学的実験‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥30
  A)各チャクラ及びそれと密接な関係にある神経叢,内臓器‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥30
  B)疾病傾向調査‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥30
  C)ヘッド帯刺戟を通しての各臓器の機能検査‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥31
  D)ECG,Plethysmogramによる検査‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥33
  E)結論‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥35
 3)経絡の存在に関する生理学的実験‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥35
  A)長浜の実験…‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥35
  B)本山の実験…‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥38
   (1)経絡テスト―3‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥38
    a 原穴及び井穴と脊髄神経分節との関係‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥40
    b 原穴及び井穴と交感神経との関係…‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥41
   (2)経絡テスト―2‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥43
   (3)経絡の方向性テストを通して陰,陽の経絡の存在を確かめる‥‥‥‥‥‥‥‥48
   (4)陰陽表裏の関係にある陰経に陽経ついてrを求めて経絡の存在を探る‥‥‥‥52
 4)U章の要約‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥57

V 測定法と計算法
 1)測定法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥65
  A)各経絡は手足の始端に井穴をもつ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥65
  B)測定点である井穴の図‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥66
  C)電極をつける‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥68    
D)測定器の説明と測定法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥69
  E)測定を正確にする為の工夫と注意‥・‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥73
   (1)測定時間について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥73
   (2)測定電圧について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥75
   (3)測定時の注意…‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥77
  F)連続して1回,2回と測ったデータの比較‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥78
  G)不関電極(IDE)が1つの場合と4つの場合の比較‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥79
  H)関電極は−,不関電極は+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥85
  I)測定に影響を与える種々の要素とそれらの測定値に対する影饗度‥‥‥‥‥‥‥86
 2)計算法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥88
 3)2)の計算法の多項目の算出の理由と意味‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥88
  A)Pについて‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥88
  B)Li―Ri=|Di|について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥89
  C)―XLRについて‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥91
  D)σについて‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥91
  E)L%,R%,D%について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥91
  F)L%〜R%のσについて‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥95
  G)測定値Li,Ri,Diをそのまま用いずL%,R%,D%を算出した理由‥‥‥‥96

W 診 断 法
 1)診断の為の基準作成‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥104
  A)自覚症状とそれと関係ある経絡‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥104
  B)診断基準作成‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥107
   (1)L%〜R%の診断基準‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥107
    a 基準の上限について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥108
    b 基準の下限について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥111
   (2)D%の診断基準‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥112
 2)各経絡―臓器の機能興奮,低下,不安定等を決める基準・‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥114
 3)生体の全体的機能を判定する基準の作成‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥115
  A)D%のσの頻度グラフより全身機能判定の基準を決める‥‥‥‥‥‥‥‥‥116
  B)L%〜R%のσの頻度グラフより全身機能判定の基準を決める‥‥‥‥‥‥‥119
  C)D%のσによる基準とL%〜R%のσのそれと何れがより適切か‥‥‥‥‥‥120
  D)L%〜R%のσの基準,D%のσのそれを実際のデータにあてはめて考察‥‥125
  E)全身の健康度を診断するに
σD%〜R%とσD%の何れが適切か‥‥‥‥‥‥‥‥128

V 他の医学的検査結果と経絡―臓器機能検査結果との比較考察
 1)レントゲン検査結果と経路―臓器機能検査結果との比較考察‥‥‥‥‥‥‥‥‥133
 2)ECGと経絡―臓器機能検査結果との比較考察‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥138
 3)或る臓器が疾病或いは機能異常をもつ時,
その臓器と同名の経絡に必ず異常がみられるとは限らない‥152