説明
この本に収められている諸論文を書いた1954年(昭和29年)~1961年(昭和36年)頃は、戦前、戦中の神道に基づく日本神国論に対する一種の反動として、戦後の社会主義、唯物論的考えが最も盛んであった頃である。
宗教とか神秘と言うだけで、インテリと自負する人々は、それを攻撃するか無視するかしたものである。したがって、超感覚的な世界に到達するためにヨガ行をしたり、そこで生ずる心身の変化の生理心理学的研究や、ヨガ行によって目覚めた超能力の生物物理学的研究をするということは、当時の大学ではとても受け入れられるものではなかった。
私は幼少から、優れた霊能者、宗教家である養母と生母の二人に連れられて、厳しい修行(滝行、一日中洞窟内での連祷等)をし、毎日、神の力の下に母達が行う人々の救いの奇蹟を見た。長じて25歳からヨガ行を始めて、種種の神秘体験と超能力を得て人々を導いてきた。
人の前生のこと、国、民族のカルマを超意識で観じ、それを解く祈りを続けて、現実に政治、経済が日本、アジアの国々で変化するのを経験し、心霊治療によって多くの人々の苦しみを救ってきた。これらの真実であることを疑うことはできない。何とかして哲学的に、あるいは科学的に解明したいと思って哲学的思索を重ね、超常現象の生物物理学的研究を重ねて、本書が出来た。
その間、大学や学会関係の人々から冷たい目で見られることが多く、研究者としての私には困難な年月であったが、二人の母の絶大な心身両面での支えと、下村先生(元東京文理科大学哲学教授、現日本学士院会員)、故小保内先生(元東京文理科大学心理学教授)、故末綱先生(元東京大学教授、数学)の暖かい理解と御支援が心の支えになって、どうにか研究を続けることができた。二人の母と三人の先生方に、心から御礼を申し上げたい。
現在は、国際的視野でみると、超心理学の研究は大学で受け入れる所も出来てきた。私共の研究所で行った経絡や気の存在、機能についての生物物理学的証明は、国際的に学会で認められ、Holistic医学では必ずとり上げるようになった。本書にでてくる「チャクラ」という言葉は、当時、日本人も西洋人も殆ど知らなかったが、今では、ヨガ実修者、宗教者は日本でも外国でもほとんどの人が知るようになり、若者の、チャクラへの精神集中を含むヨガ瞑想に励む人口が増えてきた。
世界の人類が物質文明の高度な発達と平行して、精神の進化と成長を求める方向に動きかけた徴候が至る所にみえてきた。現在、ソ連、東欧の唯物的共産主義、社会主義が崩れて、個人の自由と権利を認めて宗教を是認する民主政治へ移行しつつあることは、その一つの大きな徴である。今、地球の人類、いな、地球そのものが、より深い、大きい精神的進化と発展を求めて始動し始めた。本書は、この動きを予見し、この動きに方向を与えてきたように思う。人間存在の根源にある超感覚的世界の探究に、本書は依然として有意義であると信じている。
最後に、本書がユネスコより哲学部門の優良図書に選ばれたことは、著者の光栄とするところである。
1990年3月23日 本山 博
改訂版序文
序
一、 超感覚的なものと科学
序
(一) 超感覚的なもの
A.超感覚的なものの定義
B.本論で問題とする超感覚的なもの
(二) 超感覚的なものの確認方法と、確認された超感覚的なもの
A.ラインの方法とESP、PK
B.ユングの方法と、集合的無意識、絶対知、先験的意味、同時同意的現象
C.ヨガの方法とプラーナ、チャクラ
(三) ライン、ユング、ヨガにおける超感覚的なものの確認方法と、その見出された超感覚的なものとについての反省
A.ラインについて
ラインの功績/ラインに対する批判と希望
B.ユングについて
ユングの功績/ユングに対する批判と希望
C.ヨガについて
ヨガの長所/ヨガ行法に対する反省と希望
(四) 今後の課題
A.ライン、ユングの科学的立場からも、ヨガの超感覚的立場からも、超感覚的なものと感覚的なものとの間の相互作用の科学的解明が望まれる
B.超感覚的なものと感覚的なものとの間の相互作用、あるいは転換作用の科学的解明のための手掛り
ヨガのプラーナの流れるナディとチャクラ、および支那医学の経絡、経穴とその刺戟療法に関する科学的研究/チャクラと内分泌腺との位置上作用上の一致に関する科学的研究
二、チャクラと自律神経
序 論
(一) チャクラ、ナディについてのヨガの教説
A.チャクラ、ナディに関する体験的形而上学的説明
チャクラ、ナディの定義/チャクラ、ナディの種類/チャクラ(蓮華)、ナディの位置および構造/チャクラの本質、作用について
B.西洋医学との関連においてみられたチャクラおよびナディ
一般論/各論
(二) チャクラ、ナディと自律神経との関係の医学的研究
A.疾病、疾病傾向調査を通じてみられた自律神経系とチャクラとの関係
B.脊椎位置異常検索を通じてみられた自律神経系とチャクラとの関係
C.皮膚電流、血圧の変化測定による自律神経機能検査に基づいてみられた自律神経系 チャクラとの関係
皮膚電流測定に基づく自律神経機能検査によってみられた自律神経系とチャクラとの関係/血圧変化測定に基づいてみられた自律神経とチャクラの関係/Cの結論
D.自律神経系全体にみられる異常、不安定と間脳
E.(二)全体の結論
三、ABCクラスのESPテスト
(一)検査方法
(二)計算方法
(三) ABCクラス分けの基準と方法
(四)結果、計算、考察
(五) 「一、」と「二、」との関連においてなした結論
四、宗教経験における超意識と無意識
序
(一)宗教経験、宗教意識の定義
(二)宗教経験における無意識
A.宗教経験の階梯
B.第一、第二段階における個人的無意識
C.第三段階における無意識
(個人が再生する限り)時空を超えて存続する個人的無意識/超個人的無意識
(三)宗教経験における超意識
(四)無意識、超意識の発現しやすい状態、その状態をつくるもの
(五)超個人的無意識と超意識およびその当体の比較考察
(六)無意識(個人的無意識、再生する限り存続する個人的無意識、超個人的無意識)および超意識の当体との融合合一によって成立する宗教経験は究極のものではない
A.三つの無意識も、超意識およびその当体も、すべて有的なものである
B.三つの無意識および超意識の当体との合一において成立する宗教経験は究極のものではないこと、および宗教経験の極について
五、催眠現象と宗教経験
序
(一)催眠現象と宗教経験における方法と過程
(二)催眠過程・宗教経験の過程において生じた心理的生理的変化および存在性上の変化
(三)催眠状態と宗教経験の要約と比較
(四)催眠に入りやすい人・宗教経験をもちうる人の特性
催眠に入りやすい人の特性/宗教経験をもつ人の特性
六、宗教経験と存在
序
(一)宗教経験と新意識について
(二)宗教経験の段階と種類
(三)宗教経験の各段階は三つの段階を有つ
A.霊 感(対立における部分的交渉)
B.第一段階箪純な一致)
C.第二段階(エクスタシー)
無意識的無感覚的脱自状態/意識的になったエクスタシイー
D.第三段階(神霊との全き一致)
(四)宗教経験の各段階のもつ三段階における普遍的本質的なものと、高い段階の三段階と低い段階のそれとの間における相違
(五)「宗教経験における超意識と無意識」の内でいう宗教経験の階梯と、「宗教経験と存在」の内でいうそれとの関係
(六)存在と意識およびより高い存在への進化
(七)横の関係、縦の関係、絶対無について
七、(付録)宗教経験の具体的実例
A.霊 感
B.第一段階の宗教経験(単純な一致)
C.第二段階の宗教経験
無意識的無感覚的脱自状態/意識的になったエクスタシイー
D.第三段階の宗教経験
結 語