説明
現代は高度の物質文明の時代であり、公害等の問題があるにせよ、人々は物質文明の恩恵を種々の分野で受けています。その一つに医学の進歩による寿命の延長ということがあげられます。戦前は人生五十年等と言って、平均寿命は、戦後のそれに較べると十数年から二十年近くも短かった。戦後、平均寿命が延びたのは、医学や薬学の進歩で、幼児の死亡率が減少し、老人の年齢が延びた為と思われます。
寿命が延びたということは、地上に生をうけた者にとって誠に喜ばしいことであります。併し、もう少し立ち入って現代人の健康について種々の統計報告等をみてみますと、ここ数年、毎年、何らかの医療を受ける人口が次第に増加しています。特に四十才以上の人では慢性の胃炎、高血圧症、心臓病、或はノイローゼ等の現代病と呼ばれるものにかなりの人がかかって苦しんでいます。これらの病気の主たる原因は、高度の物質文明社会が生み出した過度の忙しさ、過度の物質的、感覚的或は精神的刺戟等であります。これらは現代に住む人々に絶えずストレスとなって、その身心をむしばんでいます。その結果、人生も半ばをすぎ、身心機能に退行が始まった四十過ぎの人々では、長年鬱積したストレスに耐えきれず、現代病にかかることになるのでありましょう。
所で、この「ヨガと超心理」という本を出すことになった理由の第一は、右に述べたような現代の物質文明社会に由来するストレスに悩む人々、更に言えば若者であれ、壮年者、老年者であれ、現代社会に住んで、絶えず現代文明に由来するストレスを受けている人々に、そのストレスを払い除け、それに打ち勝ち、それを解消し、身心の健康を得る非常に有効であるヨガ行法を示さんが為であります。第二の理由は、 ヨガ行によって身心に如何なる変化が生ずるかを、生理学、超心理学、更には鍼灸医学に基づく諸種の実験の結果に拠って明らかにしたものを詳しく示し、 ヨガ行法の有効性を科学的に実証せんが為であります。第三の理由は、近年超心理現象を解説する本が多数出版され、多くの人々が超心理現象に興味をもっていることが推測されます。そこで、起常能力の一つである念力について私共の研究所で数年間連続して行なった実験結果を易しく解説して、更に多くの人々に超常現象、更には起心理学についての知識を深めて戴きたいと思うからであります。
この本は三章からなっており、 一章は、著者の二十年余りの体験に基づいて、 ヨガの行法と、それによって生ずる心の変化、発達を初心者にも解り易く解説したもの。二章は、主としてヨガ行によって生ずる身体的変化を、生理学及び鍼灸医学に基づく実験に拠って調査し、解明したもの。三章は、 ヨガ行によって目覚めた超常的能力の一つである念力(PK)が、どういう生理的身体的条件の時に発現し易いかを、超心理学、生理学、鍼久医学等に基づく実験に拠って調べた結果に基づいて明らかにしたものであります。ここでは身心相関に関する問題についても、考察を或る程度行なってみました。その中でも特に、念力の影響を受け易い臓器が心、胃、腎等であり、 又鍼灸医学で言う二焦経―生命力(気)の流れる経絡―であったことは、精神身体医学的にみても、銀灸医学の観点からみても、非常に興味ある現象であります。
(詳しくは本文をご参照下さい)
この本を読まれた方が、 ヨガ行を実践され、現代社会に由来するストレスに打ち勝ち、それを解消し、心身の健康を得られ、忙しい現代に生活しながら、それを超えた所で悠々と生きる心境を達成せられんことを切望します。
一九七一年十二月
著 者
追 記
各章はそれぞれ違った場所つまり大学、研究所、宗教教団等で別個に講演したものです。従って各章には同内容のものが重複している場合もありますが、それぞれに観点を違えて話しましたので、同一のことを立体的にご理解戴けると思い、そのままにしてあります。
著者序文
一 ヨガ行法
序
(一)第一段階ヤーマ、第二段階ニヤーマ
(二)第三段階アーサナ(坐法)
(三)第四段階プラナヤーマ(呼吸法)
(四)第五段階プラティヤハーラ(制感)
(五)第六段階ダラーナ(精神集中)
(六)第七段階ディアーナ(瞑想)
(七)第八段階サマージ(三昧)
二 ヨガについて(主として生理心理学的立場からの把握)
序
(一)ヨガの定義
(二)ヨガの八支則(ヨガ行法の八段階)
(三)ヨガの種類
精神的なものに主眼をおくもの
身体的なものに主眼をおくもの
心霊的超心理学的なものに主眼をおくもの
(四)行法の相違による身体的変化の相違
(五)クンダリニ、チャクラについて
超感覚的体験に基づくクンダリニ、チャクラの説明
チャクラとそれに対応する神経叢
ヨギの自律神経機能―鍼灸医学を応用した生理学的夜査―
ヨギでは身心相関が高い
(六)超意識と超常的能力
(七)ヨガの悟り
三 PK(念力)の発現条件について
序
(一)PKとは何か
(二)宗教心理学研究所でのPK実験
(三)鍼灸医学を応用したPKテスト
左右十四井穴の皮膚電流測定
Single-Pairテスト
A→Pテスト
(四)PKの発現し易い条件
(五)霊能者の特徴
むすび